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さまざまな症状への対応

脱毛

~がんの治療を始める人に、始めた人に~

1.脱毛について

薬物療法や放射線治療などの影響で、髪の毛や体毛が脱毛することがあります。脱毛の程度や時期は治療の内容によって異なり、同じ治療でも個人差があります。多くの場合、脱毛は一時的な副作用で、治療が終われば再び生え始めます。

薬物療法による脱毛は、髪の毛のほか、眉毛、まつ毛、鼻毛、ひげ、わき毛、陰毛など、全身で起こります。脱毛はすべての薬物療法で起こるわけではなく、脱毛する程度も投与する薬剤によって異なります。脱毛は、原因となる薬剤を投与してから1~3週間後から始まり、治療が終わると再び生え始めます。2~3カ月すると産毛のような柔らかい毛が伸びてきたことが実感でき、3~6カ月で短い毛が生えそろうことが多いです。

放射線治療による脱毛は、放射線を照射した部位のみで起こります。照射を開始してから10日後くらいから始まり、多くの場合で治療が終わってから3~6カ月くらいで毛が生えてきたことを実感できます。照射する放射線の量が高い場合(1回で7Gy以上を照射、もしくは、トータルの照射量が50Gy以上)は、毛が生えてこなくなることもあります。

自分が受ける治療で脱毛が起こるかどうかや、脱毛する程度などを、担当の医師や薬剤師、看護師などに確認しておくとよいでしょう。

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脱毛など、がんやがんの治療に伴う見た目の変化に対するケアを「アピアランス(外見)ケア」といいます。アピアランスケアは年齢や性別にかかわらず、必要なときには誰でも受けることができます。詳細は関連情報をご参照ください。

2.原因

一部の薬物や放射線は、細胞分裂が活発な細胞に作用します。髪の毛や体毛は毛母もうぼにある毛母細胞が活発に分裂して成長するため、薬物療法や放射線治療の影響を受けやすく、脱毛が起こります。(図1)

図1 毛根の構造
図1 毛根の構造

薬物療法が脱毛の原因となる場合、薬剤の種類や投与する量などにより、脱毛する程度が異なります。髪の毛や体毛がすべて抜けることが多い薬剤として、タキソテール(パクリタキセル)、ドキソルビシン(アドリアマイシン)、シクロフォスファミド(エンドキサン)などの細胞障害性抗がん薬があります。薬剤によっては、薄毛になる程度のものや、ほとんど脱毛しないものもあります。いくつかの薬剤を組み合わせた治療では、脱毛の程度が大きくなりやすいです。

薬物療法 イメージイラスト

放射線治療が脱毛の原因となる場合、放射線の強さや当てる方向などにより、脱毛する部位や程度が異なります。なお、胸に放射線を当てた場合、胸毛は抜けますが髪の毛は抜けないなど、放射線を当てていない部位は脱毛しません。

薬の名前は「一般名(商品名)」で示しています。薬の名前の記載方針については関連情報をご覧ください。

3.脱毛が起こったとき

髪の毛が抜け始めると、頭皮が引っ張られるような痛みやヒリヒリした痛み、かゆみなどを感じたり、頭皮が赤くなったりすることがあります。頭部に放射線治療をした場合は、脱毛に加えて日焼けのような皮膚炎が起こることがあります。これらの症状は一時的なもので、時間が経つと落ち着いてくることが多いです。

頭皮や皮膚に気になる症状があるときは、担当医に伝えましましょう。看護師や薬剤師などの身近な医療者に相談するのもよいでしょう。

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脱毛を軽減する目的で、薬物療法の点滴中に頭皮を冷却する頭部冷却装置を導入している施設もあります。2025年3月現在、頭部冷却装置の使用は公的医療保険の適用外で、治療費は自己負担となり、費用も施設によって異なります。

また、2025年3月現在、がんの治療による脱毛の予防や発毛を促す効果が十分に確認された製品はありません。

4.ご本人や周りの人ができる工夫

1)脱毛が予想される治療が決まったら

脱毛が予想される治療が始まってから実際に毛が抜け始めるまでは数週間あります。脱毛を確実に防ぐ方法はありませんが、その間に脱毛に備えることができます。

(1)帽子やウィッグ(かつら)などの情報を集める

髪の毛が抜けたときに帽子やウィッグを使うかどうかや、使う場合はどのような場面かを考えてみましょう。

治療前はウィッグがあった方がよいと思っていても実際には使わない場合もあるため、あわててウィッグを準備する必要はありません。一方で、治療前にはウィッグは不要だと思っていても、脱毛が始まると気持ちが変わることもあります。ウィッグを使うか使わないかに関わらず、治療が始まる前に、種類や値段、選び方などの情報を集めておくとよいでしょう。

ウィッグの価格は数千円から数十万円までさまざまです。高額であれば自分に合うということもありません。帽子やウィッグを選ぶときは、使う場面や時間に合わせ、デザイン、重さ、通気性、試着したときのつけ心地などから、予算の範囲内で自分の好みに合ったものを選びましょう。

手頃な価格のウィッグはインターネット等で販売されており、手軽に手に入れることができます。購入する前に、返品・交換ができるかなど確認しておくと安心です。

帽子 イラスト

ウィッグの購入費用の助成制度を設けている自治体もあります。詳しくはお住まいの市区町村の役所やホームページをご確認ください。がん相談支援センターにも相談することができます。

子どもの脱毛について

子どもが脱毛する治療を受けるときに、親として不憫に思ったり、動揺したりするかもしれません。しかし、大切なのは子ども自身が「病気でも、脱毛しても、家族から変わらずに大切に思われている。」という安心感が持てることです。脱毛に対する子どもの反応は、年齢や性格によって個人差があります。子どもが安心感を持てるような言葉かけをして、子ども自身の脱毛に対する気持ちやウィッグや帽子を使いたいかどうかを聞いてみましょう。

ウィッグや帽子を使う場合、その場面は、授業やスポーツ、修学旅行や習い事などさまざまです。それぞれの場面で子どもが安心して過ごせるように準備をするとよいでしょう。保育園または幼稚園、学校の先生とも相談しながら、本人への接し方や友達への説明の仕方などについて考えることも大切です。

子どものウィッグは、大手メーカーや患者会などで無償提供していることがあります。詳しい情報は、看護師やがん相談支援センターなどに確認してください。

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(2)髪型を整える

髪の毛が長いと、抜けた毛が絡まったり、気になったりすることがあります。そのため、治療が始まる前に髪の毛を短く切る人もいます。

頭部に放射線治療を行う際の髪型

頭部に放射線治療を行うときは、放射線が患部に正確に当たるように、頭部を固定するシェル(頭部をおおうマスク)を作成します(図2)。シェルを作った後に、ロングヘアを短髪にするなど、髪の毛の量や長さが変わると、固定の位置がずれることがあります。そのため、髪型を変えるのはシェルを作る前がよいでしょう。治療の途中で髪型を変えたいときは、放射線治療科の医師や看護師、放射線診断技師などに相談しましょう。

図2 頭部を固定するシェルのイメージ
図2 頭部を固定するシェルのイメージ
ウィッグを購入するときのヒントになるリーフレットが掲載されています。

2)脱毛が始まったとき

(1)髪の毛が抜けたとき

髪の抜け始めは、バンダナや室内でも利用できる柔らかい素材の帽子を使うことで、外見的なカバーに加えて、床に髪の毛が落ちるのを防いだり、布団や枕に髪の毛がつきにくくなります。

帽子 イラスト

髪の毛が抜けてから頭を洗うときには、今まで使っていたシャンプーを使うことができます。洗髪後はタオルで軽く押さえて水分を吸収させましょう。ドライヤーで乾かしても構いません。

完全に脱毛した場合は、顔や背中を洗う延長で洗顔料やボディーソープを使うこともできます。リンスやコンディショナーは髪に使うものであり、すべての毛が脱毛した場合、使用する必要はありません。

(2)眉毛やまつ毛が抜けたとき

眉毛やまつ毛が脱毛して顔の印象が変わることが心配な場合は、アイブロー(眉ずみ)を使って眉を描いたり、アイシャドーで目元を整えたりすることで対応できます。日頃から眉毛を描く習慣がないと難しく感じるかもしれないので、脱毛し始めた頃から少しずつ練習しておくとよいでしょう。眉毛が抜ける前に自分の顔の写真を撮っておくと、脱毛後に眉毛を描くときの参考になります。

フレームが太い眼鏡を使うことで、眉毛やまつ毛の脱毛を目立たなくすることができます。なお、眉毛やまつ毛は、髪の毛の脱毛の後に始まり、髪の毛より先に生え始めることが多いといわれています。

まつ毛が抜けると目にごみが入りやすくなります。気になる場合は、眼鏡をかけるなどの工夫をするとよいでしょう。

メガネ イラスト

(3)鼻毛が抜けたとき

鼻毛が抜けると、鼻水が流れ出たり、鼻の中が乾燥して痛みを感じたりすることがあります。また、花粉症の場合は、症状が強くでることもあります。マスクを使用するのも1つの方法です。

マスク イラスト

3)再び毛が生えてきたら

がん治療の影響で脱毛したあとに生えてくる毛は、くせ毛、軟毛、剛毛、白髪などの変化が見られることもありますが、これらは一時的なもので、元の状態に戻ることが多いです。

生えてきたくせ毛を伸ばしたり、髪の毛を染めたりする場合は、パーマ剤や染毛剤の使用に適した十分な長さに髪が伸びてから行うのがよいでしょう。過去にパーマ剤や染毛剤によるアレルギーや皮膚のトラブルがないこと、頭皮に湿疹や傷がないことを確認しましょう。

パーマ剤や染毛剤は、できる限り治療前に使用していた製品を使い、パッチテストが必要なものは実施するようにしましょう。パーマ剤や染毛剤が頭皮に付着しないように、美容室や理容室に行くことをお勧めします。

パーマや染毛の後に頭皮にトラブルが生じた場合は、速やかに皮膚科を受診しましょう。

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5.こんなときは相談しましょう

脱毛による外見の変化は、年齢や性別にかかわらず、クオリティ・オブ・ライフ(QOL:生活の質)に影響を与えることがあります。脱毛やその対処方法について分からないことや不安があるときは、担当医や看護師、薬剤師などの身近な医療者や、がん相談支援センターの相談員などに相談しましょう。

こんなときは相談しましょう イメージイラスト

また、同じ経験を持つ人の話を聞くことで、悩みや不安を共有したり、情報交換をしたりすることができます。患者会や患者サロンに関する情報が欲しいときも、がん相談支援センターで相談することができます。

患者会・患者サロン イメージイラスト

6.関連情報

髪やウィッグ、爪や肌、眉毛やまつ毛への影響や対処法がまとめられているリーフレットが紹介されています。
男性向けのアピアランスケアに関するガイドブックが掲載されています。
髪の毛の脱毛、眉の描き方について詳しく説明したリーフレットが紹介されています。
薬物療法や放射線治療による脱毛に対する具体的なケア方法が紹介されています。
脱毛に対するケア方法の詳細が記載されています。
外見の変化と同時に起こることがあるさまざまな症状への対処については、以下のページもご覧ください。

7.参考資料

  1. 野澤桂子・藤間勝子編.臨床で活かすがん患者のアピアランスケア 改訂2版.2024年,南山堂.
  2. 日本がんサポーティブケア学会編.がん治療におけるアピアランスケアガイドライン 2021年版.2021年,金原出版.
  3. 日本がんサポーティブケア学会編.がん支持療法テキストブック.2022年,金原出版.
  4. 清水宏.あたらしい皮膚科学 第3版.2018年,中山書店.
  5. 国立がん研究センター看護部編.国立がん研究センターに学ぶがん薬物療法看護スキルアップ.2018年,南江堂.

本ページの情は、「『がん情報サービス』編集方針」に従って作成しています。
必ずしも参照できる科学的根拠に基づく情報がない場合でも、有用性や安全性などを考慮し、専門家および編集委員会が評価を行っています。

作成協力

更新・確認日:2025年03月07日 [ 履歴 ]
履歴
2025年03月07日 内容を確認し、「脱毛 もっと詳しく」と統合して更新しました。
2020年03月11日 更新しました。
2004年12月02日 更新しました。
1996年07月25日 掲載しました。
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